MUSIC

SILENT

14th SINGLE

被投降拒否

2023.2.22 RELEASE

LISTEN

written by Danny L Harle / Fanny Andersen / Shigeco Ogula 

LINER NOTE

空木ムギ(18才)、裏滋賀県在住。

登校拒否は生徒側がするものだと思い込んでたけど、未曾有のウィルスが世界を覆い隠すと、私たち受験生ですら学校や塾から登校拒否を被る立場になった。

校舎に人っ子一人いなくなった放課後、帰宅部のくせに教室に長く居座って、遠くから微かに聞こえる運動部の掛け声をBGMに、ただただオレンヂ色に染まっていく空間に包まれているのが好きだった。私のような空っぽで意味のない人間と、空っぽでも意義のある空間が、等しく物質として鮮烈な夕陽に融かされていくことは、かろうじて、私にも存在意義のような感触を与えてくれた。

自分で言うのも何だけど、勉強も運動も、平均以上にできる方だと思う。
できることはある。でも、したいことやすべきことが見当たらないのだ。

学生時代を『執行猶予』だと皮肉った先生がいた。
限られた時間を、来るべき時のために少しずつ費やしていると言い放ったのだ。
すぐにネットで調べてみたら、人生はたったの3万日、72万時間だと書いてある。
それだけしかない時の束を、少しずつ切り崩して生きていくのだとしたら、
行き当たりばったりの私では、より足りない気がした。

夢のある人にも最短ルートなど無いと言われる世界で、
そもそも目的地の決まっていない者は、目の前のT字路を
どちらに折れるべきか?の判断基準すらないのだから。

自分勝手な言い分だけど、先を生きる先生ならば、真逆のアドバイスをして欲しかった。
毎日、意味のないようなことでも少しずつ積み重ねていれば、いつか、何かになれる!とか、
今は意味のないと思えるような全てが、いつか、報われる日がやってくる!とか・・・
運命からの引き算ではなく、日々の積が最後にこの旅に名前を付けてくれると信じたかった。

前者は、夢のある人には効果的な激励だと思う。
ここは進学校だし、なおさらだ・・・でも、
ムギのように、本当に本気で理由のない人間には、
あまりにも酷な表現だった。

幸運にも光輝く夢に向かって、何者かになるための努力を許された人間もいれば、
不運にも理由のない無闇な努力を続けることで、何かを得られる人間だっている。

ただ、後者は、そこに「今はまだ」を付けたいだけなのだ。

今はまだ理由もなく試験で良い点を取り、無闇に早く走り高く飛んだりする虚しさを、私は空っぽと呼んでいて、そんな空虚から抜け出せないでいる間は、放課後の教室という夜を越えれば役立つ箱へと戻る束の間の無意味に溶けるぐらいでしか、この世界と未来に期待すら持てない者がいるのだ。

学校からの被登校拒否は、近々、きっと、終わるだろう。
でも、人生からの被投降拒否は、ずっと、終わらない。

そんな仮想少女「空木ムギ」の「被投降拒否」を、十五少女が代弁する。