SILENT
13th SINGLE
キミノイル世界線
feat. another anima
2023.1.11 RELEASE
music written by Dazsta / Kanata Okajima
words written by Kanata Okajima
poetry written by Yasuha Uchishiba
acoustic guitar:FZ from RHC/sfpr
electric guitar:12
produced by Dazsta
文月ラン(17才)、カグツチ市在住。
自分より、ずっと、心の綺麗な同級生が死んだ。2人で遊ぶような仲ではなかったけれど同じクラスで、こんな小さな町だから会えば30分は話し込んだ。そんなキミが死んだ。その日のアルバイト帰り、心を掻き毟る衝動に任せて切符を買った。行き先はどこでも良かったが、2時間先にある大都市に向かうことにした。
ドが付く田舎ではないが、決して大都会でもないこの町。都会にあるものは一応全てある。カラオケボックスにゲームセンター、ターミナル駅と直結したショッピングモール・・・全て揃っているからこそ侘しい。そこには都会のような規模も煌めきもないのだ。
そんな町が、今日は一段と牢獄のように澱んで見えた。
ここをきっちり飛び出す術などないし、何よりまずその訳がない。
そして、自分より心の美しいあの子が死んだ。人伝てにそれを聞いた時、悲しくもなかったし、涙も出なかった。残ったSNSには、あの頃と変わらない笑顔の写真が載っていた。ただ、何だか悔しくはある。神様なんて絶対にいないと改めて識った。
いくつもの山を真っ暗なトンネルで通り抜けていく。月に照らされ美しかった田園風景は、いつの間にか自光する工業地帯へと変わり、過剰にライトアップされた直線的な造形美へと変わっていた。それはそれで美しい。やがて車窓には、その長方形に収まり切らないほどのきらびやかな大都会がアサインされた。
結局、ランは、駅どころかプラットフォームにさえ一歩も踏む出すことができない。結局、列車は逆走を始める。ゆっくりと大都市を滑り出すと、窓の外には再びきらびやかなビル群。でも、今度は、それらがくすんで見えた。
宇宙から見る地球が、土や木々、私の着ている浅葱色のサマーコートが混ざっていても深い青に見えるように、かつて、世界には確かにキミの色も混ざっていて、それを失った世界が少しだけくすんで見えるようになったことに自分だけが気付いている(かの様だ)。誰もあの子が死んだことにすら気付いていない(かの様だ)。
世界はいつも通り回り人は巡る。でも、キミという存在がいなくなって、少しだけ世界が色を変えたことを私は知っている。どれだけ離れた所から見れるか・・・きっと、その距離の問題だ。この列車は私にとっての宇宙船。この星は、いつだって青いのだ。
そして、やっと、泣くことができた。
悲しいんじゃない。
この世界の残酷さが、怖くて心細くて泣いた。
数少ない私を知る一人がいなくなって、キミを想っているのが自分だけな気がして、そんな孤独に堪え切れず、憐れみではない純粋な寂しさが涙滴になって溢れ落ちた。
列車はそろそろ再びの工業地帯に差し掛かる所。
人工的で過剰な明るさが、むしろ、温かかった。
そんな仮想少女「文月ラン」の「キミノイル世界線」を、十五少女が代弁する。